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トランスジェンダー・LGBTのスポーツ参加を支える

変化への挑戦と強い意思、そして夢みる力を描く物語

78’ 分予定

2020年 イタリア・ボローニャ。ヴァレンティナは視力障害を患うトランスジェンダー・アスリート(短距離走者)。約2年間ホルモン療法を続け、女性の体を獲得する以前は男性競技でイタリア国体で優勝したこともある著名なアスリートだった。

今彼女は、キャリアの締めくくりとして決断をした。彼女の夢 -東京2020 パラリンピック競技会へ、イタリア初となるトランスジェンダー代表として出場する- を実現するのだ。

映画化のきっかけ

ヴァレンティナは競技引退を考えていた頃グルッポ・トランスという活動団メンバーに出会う。ホルモン療法後、ヴァレンティナは女性競技への参加を拒否されていたのです。トランスジェンダーとスポーツ参加競技の性差について初めての対処に混乱し、決定を先延ばしにするスポーツ協会。しかし視覚障害を持つヴァレンティナにとって、走ることが生きる力の源であり心の拠り所でした。 彼女の選手としての最後の挑戦を支えるため、このプロジェクトは生まれました。

社会に訴えかけるドキュメンタリー映画

トランスジェンダーのプロスポーツ競技参加という重要且つ議論を呼びかける作品。

英国ほかでは既にトランス女性のスポーツ参加に議論が重ねられてきた(化学的というよりは観念的な意見で二分されているが)。スポーツ協会への問い合わせ数からも、トランスジェンダー競技者のスポーツ参加について、疎外されるケースが多く予想されます。映画の協賛グループのUISP(全イタリアスポーツ協会)は、イタリアで初めてトランスジェンダーの会員資格を認めた団体で特別なID(アリアス)を発行してくれました。

新たな視点:メディアでのLGBTQ+当事者の描かれ方

通常メディアでのLGBTQ+当事者の物語は主に2つに分かれます。1つ目は一部大衆の異常な好奇心から、性の変種としてセンセーショナルな扱いをされがち。さらに当事者達は、典型的に苦しむ人として描かれがち -彼・彼女の苦しみがあたかも「違う」事が原因で起こるとされてしまう事が多いのです。

もう一方ではカテゴリーに押し込められた人として描かれる事もあります。性転換等が人生のサクセス・ストーリーと紐付けて語られ、男女の社会の出来事として扱われる。トランス女性がヒーロー的に描かれる事が多く、女性らしいトランス女性や筋肉質のトランス男性の描写が多いです。

我々はこのテーマの複雑さから目を逸らす事なく、かつ人間らしい感動を呼び起こすストーリーを目指します。これは美しいブロンドヘアを夢見た女性の物語 -実際はカツラでなく植毛という厳しい選択をしなければなりませんでした。元イタリア記録保持者で「不幸せな足の速い男性よりも、幸せでちょっと遅い女性」になることを選んだ物語の記録なのです。

複数のアイデンティティを併せ持つ主人公

この映画は議論や矛盾から逃げずに向き合います。彼女の意見は多彩で様々な常識に疑問を投げかけ、映画の中で答えを追求していきます。ヴァレンティナは足の速い障がい者です。競技練習する事で自分に対する安心感を得られるのです。ヴァレンティナは女性です:女性の身体で生まれようが後天的に選ぶのかは大差ないのです。そしてヴァレンティナは欠損した男性でもありません。いわゆる典型的な男性としてのシンボル(仕事や家族、家やスポーツ選手としての成功)を持ちつつ、それらに疑問を持つ準備もできていました。性転換ではなく自分の人生を掴む事に成功した物語なのです。これは女性となり、社会で未だに平等な扱いを受けない女性として活躍するという二つの夢を実現する、成熟していく人間の物語なのです。

 このような視点からタイトルの『5 NANOMOLES』-女性枠の陸上競技におけるテストステロン基準値は雄弁に語りかけます。男性、女性のくっきりとした境界となる基準値として、現代社会で欠落している視点を象徴しているのです。