
トランスジェンダー・LGBTのスポーツ参加を支える
変化への挑戦と強い意思、そして夢みる力を描く物語
新たな視点:メディアでのLGBTQ+当事者の描かれ方
通常メディアでのLGBTQ+当事者の物語は主に2つに分かれます。1つ目は一部大衆の異常な好奇心から、性の変種としてセンセーショナルな扱いをされがち。さらに当事者達は、典型的に苦しむ人として描かれがち -彼・彼女の苦しみがあたかも「違う」事が原因で起こるとされてしまう事が多いのです。
もう一方ではカテゴリーに押し込められた人として描かれる事もあります。性転換等が人生のサクセス・ストーリーと紐付けて語られ、男女の社会の出来事として扱われる。トランス女性がヒーロー的に描かれる事が多く、女性らしいトランス女性や筋肉質のトランス男性の描写が多いです。
我々はこのテーマの複雑さから目を逸らす事なく、かつ人間らしい感動を呼び起こすストーリーを目指します。これは美しいブロンドヘアを夢見た女性の物語 -実際はカツラでなく植毛という厳しい選択をしなければなりませんでした。元イタリア記録保持者で「不幸せな足の速い男性よりも、幸せでちょっと遅い女性」になることを選んだ物語の記録なのです。
複数のアイデンティティを併せ持つ主人公
この映画は議論や矛盾から逃げずに向き合います。彼女の意見は多彩で様々な常識に疑問を投げかけ、映画の中で答えを追求していきます。ヴァレンティナは足の速い障がい者です。競技練習する事で自分に対する安心感を得られるのです。ヴァレンティナは女性です:女性の身体で生まれようが後天的に選ぶのかは大差ないのです。そしてヴァレンティナは欠損した男性でもありません。いわゆる典型的な男性としてのシンボル(仕事や家族、家やスポーツ選手としての成功)を持ちつつ、それらに疑問を持つ準備もできていました。性転換ではなく自分の人生を掴む事に成功した物語なのです。これは女性となり、社会で未だに平等な扱いを受けない女性として活躍するという二つの夢を実現する、成熟していく人間の物語なのです。
このような視点からタイトルの『5 NANOMOLES』-女性枠の陸上競技におけるテストステロン基準値は雄弁に語りかけます。男性、女性のくっきりとした境界となる基準値として、現代社会で欠落している視点を象徴しているのです。